メニュー

JOGMECホーム

地熱発電の可能性

日本の地熱研究における第一人者であり、地熱の普及に向けて活動を行う江原幸雄氏に地熱の「未来」についてコメントをいただきました。

近未来の地熱発電

日本列島は火山列島である。火山の下にはマグマがある。そのマグマが地熱発電の元、地熱貯留層を生み出している。地熱貯留層の下には高温の岩体が広がっている。そして、さらにマグマへとつながっていく。日本列島の下には無尽蔵とも言える地熱資源が眠っている。2011年3月11日、東日本大震災・福島原発事故を経験した日本は、地熱エネルギーにとっても再出発の年になった。45年を超える歴史を持つ日本の地熱発電は17ヵ所約50万kWの実績を持つ。しかし、2050年に向けて、再生可能エネルギーに舵を切らなければならない日本にとって、地熱には大きな期待が寄せられている。この期待に応えなければならない。断裂型地熱貯留層探査の高精度化、持続可能な地熱発電の実現、自然景観と調和した地熱発電所建設技術、地域の特性に応じた熱水の直接利用による地域振興……、われわれは、現在の技術をもう一歩進めることにより、大きな前進を勝ち取ることができる。そして、まず、現在よりプラス100万kWの地熱発電所建設を目指そう。これで発電量にすると太陽光1,000万kWに相当する。これを2020年代には実現したい。これが実現できれば、その後のさらなる貢献可能性について自信を持って語ることができるだろう。

九州大学名誉教授 江原幸雄氏

えはら・さちお/九州大学名誉教授、理学博士、地熱情報研究所代表。
1970年北海道大学理学部卒業、NEDO地熱開発促進調査委員会委員長、国際地熱協会理事、日本地熱学会会長などを歴任。著書に『地熱エネルギー ―地球からの贈りもの―』(オーム社)などがある。

日本は、エネルギーを海外に依存している―。誰もが、子どもの頃からそう教育されてきた。実際、日本のエネルギー自給率は4%程度にすぎない。しかし、ずっと私たちの足下には、地熱という大きなエネルギー源が眠っていたのだ。

その事実を知った時、日本にとって福音だと感激した。と同時に、戦前から研究されてきた地熱発電がなぜ、普及していないのかが不思議でならなかった。しかし、東日本大震災によって発生した原発事故で、私たちは無尽蔵に消費できると思っていた電力に限りがあるのを知った。私たちの生活や産業を支えてきた原発を停めたくても、代替エネルギーがなければ叶わない厳しい現実に直面している。さらに、火力発電が日本の貿易赤字を厖大に膨れさせ、今や国家的な危機の火種となりつつある点も、心配だ。そんな状況の中で、地熱発電の価値と意義が見直されている。これは、運命の女神が、まだ日本を見捨てていない証かも知れない。

発電とは大がかりな事業であり、多くのステイクホルダーの思惑が完全に一致するのは難しいだろう。だが、日本の未来のために、互いが理解し協力し合うことで地熱発電が普及し、日本再生のシンボルとなるのを願ってやまない。

『マグマ』(角川文庫)

まやま・じん/1962年大阪府生まれ。
新聞記者、フリーライターを経て、2004年『ハゲタカ』でデビュー。2006年に発表した、地熱発電をテーマにした『マグマ』は2012年にWOWOWでドラマ化された。その他の著書に、中国での原発建設を描いた『ベイジン』、3.11後の政治を舞台にした『コラプティオ』、日本の食と農業に斬り込んだ最新作『黙示』など。また、2013年3月、地熱を分かりやすく解説した新書『地熱が日本を救う』を刊行。