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全国地熱自治体サミットin湯沢

2015年8月7日に開催した「全国地熱自治体サミットin湯沢」の開催概要と資料等を紹介します。

開催概要

国内で23年ぶりの大型地熱発電所となる「山葵沢地熱発電所」。その建設が始まった秋田県湯沢市で、あらためて地熱とは何か、そして街にどのようなことをもたらすのか──。

JOGMECと湯沢市は、8月7日(金)湯沢市において「全国地熱自治体サミット in 湯沢」を共同で開催しました。地熱資源に恵まれた全国の8地方自治体の首長らが集結して事例・経験・取り組みを披露し、参加したゲスト、湯沢市民、大学生、高校生、382名の一般参加者とともに考える盛況なイベントとなりました。

1.日時
2015年8月7日(金) 13:00〜18:00
2.場所
湯沢グランドホテル
3.主催
独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)/秋田県湯沢市
4.後 援
資源エネルギー庁、秋田県、日本地熱協会、秋田魁新報社、秋田大学、国際教養大学
5.参加自治体
(1)北海道森町(2)岩手県八幡平市(3)岩手県雫石町(4)秋田県湯沢市(5)宮城県大崎市(6)福島県柳津町(7)大分県九重町(8)鹿児島県指宿市
6.来場者数
382人
7.開催テーマ
「地熱開発と地域活性化〜地熱資源開発の付加価値とは何か〜」
8.開催要旨
映像及び東京大学客員准教授松本真由美先生の解説で地熱開発の現状、地熱利用のしくみを紹介した後、参加自治体首長らによるプレゼンテーションと質疑が行われ、北海道農業の一端を担い続けている森町の地熱利用トマト・きゅうりの生産、約半世紀かけて出稼ぎの町を一大温泉郷に成長させた八幡平市の地熱による配湯事業など各自治体の地熱利用の取り組み事例が紹介されました。
ゲストによるトークセッション等のあと、授業で学んだ商業の知識や技術を活かし地域で地熱のブランド化に取り組んだ湯沢翔北高校の乾燥さくらんぼ「ミッチェリー」の事例、サミットと並行して当日朝から「若手が活躍できる街づくり」「売れるモノ作り」「観光など人が集まる街づくり」の3テーマについて議論を交わしてきた市民討論会の成果が発表され、若い世代の視点が会場を沸かせました。
これら若い世代の視点は、パネルディスカッションを行う首長らの議論の中に反映され、最後に湯沢市長が、「今回のサミットをひとつの出発点として、これからも自治体同士また地熱地域の住民をはじめとするステークホルダーの皆さんと知恵を出し合い、地熱を活かす努力を続けたい」と締めくくりました。
開催の内容は、今後小冊子として取りまとめ地熱開発への取り組みを行う関係者に配布するなど、広く発信してまいります。

満席となったサミット会場

満席となったサミット会場

主催者挨拶

写真/地熱貯留層の地表調査

JOGMEC 副理事長
黒木啓介
(平成28年2月〜
JOGMEC 理事長)

日本国内で地熱資源に恵まれた地域は限られており、地熱と地域の共生を強く意識することが肝要です。地熱に恵まれた地域には、それぞれ特有の課題がありますが、高齢化や人口減少、産業の振興など共通の課題もあります。
国内を代表する地熱地域の地方自治体の方々にお集まりいただき、地熱資源を有する各地方自治体の課題と"地熱の付加価値"について考え発信していく、実り多きサミットが開催できたことを喜ばしく思います。

写真/地熱貯留層の地表調査

湯沢市長 齊藤光喜

北海道から九州に至るまで、地熱地域の自治体の方々とともに、地熱をめぐる現状や課題、展望を共有できました。地熱は国策に貢献できるだけではなく、地元にとっても有益なものであると考えられます。今回のサミットはひとつの出発点です。これからも、自治体同士また地熱地域の住民の皆さまをはじめとするステークホルダーの皆さんと知恵を出し合い、地熱を生かす努力を続けたいと思います。

開催主旨

世界第3位のポテンシャルをもつ日本の「地熱エネルギー」への期待

東日本大震災から3年が経過した昨年4月、我が国では「エネルギー基本計画」の閣議決定がされ、その中では再生可能エネルギーについて最大限導入を図るとされています。特に安定的な地熱エネルギーはベースロード電源と位置づけられ、世界3位のポテンシャルを持つ電源として期待が高まっています。

本年7月には環境省が国立国定公園内における地熱資源開発のための優良事例をとりまとめ、さらなる規制緩和の方向性が決定されました。これにより我が国の資源ポテンシャルの7割まで、地熱資源開発を推進することが可能となりました。

国内で23年ぶりの大型地熱発電所の建設がはじまった「地熱の街・湯沢市」

開催地となった秋田県湯沢市は、地熱資源に恵まれ、上の岱(うえのたい)地熱発電所が1994年から稼動しているほか、本年5月からは、国内で23年ぶりの大型地熱発電所となる山葵沢地熱発電所の建設が開始されました。また、新たな地熱発電を目指した調査も行われています。

さらに発電以外では、農産物の生産や食品の加工などの地熱利用が活発なことから、今回の開催テーマである「地熱開発と地域活性化〜地熱資源開発の付加価値とは何か〜」に相応しい街だと考えました。

全国の地熱自治体首長が集結し、地熱資源開発を通じた地域活性化の可能性を議論

現在、地熱発電所を有する自治体はもとより、国内には数々の自治体が、地熱資源開発に関心を寄せ、その可能性を探っています。各自治体が、地熱開発に関心を寄せる理由は、売電や発電所における雇用創出もありますが、それ以外にも地熱・熱水の利用による観光振興・産業振興・農業振興など多くの効果を地熱開発がもたらし、魅力ある地域づくりにつながると考えているからです。
今回、全国8つの地熱自治体が一堂に介する初の試みとなった「全国地熱自治体サミット」では、こうした地熱の付加価値によってもたらされる地域活性の可能性について、実際にその利活用を実践している地熱自治体の報告を踏まえ共有と進化を図ろうという考えのもとに開催しました。

参加自治体プレゼンテーション-1

写真/地熱貯留層の地表調査

ファシリテーターの松本真由美先生
(東京大学教養学部客員准教授)

サミット冒頭では、地熱資源を活用した地域での取り組みについて、全国の大型地熱発電所を持つ8自治体の代表者が先行事例のプレゼンテーションを行いました。また、このプレゼンテーションを踏まえて東京大学教養学部客員准教授の松本真由美先生のファシリテーションのもとパネルディスカッションを実施しました。これらのプログラムを通じて、各自治体が地熱資源が地域にもたらす価値を積極的に活用しようとするなかで、それぞれの地域性を活かした取り組みを地域と一体になって推し進めていこうとする姿が浮き彫りになりました。

満席となったサミット会場

自治体代表による地熱活用についての事例発表の様子
(写真は 宮城県大崎市による発表時)

写真/地熱貯留層の地表調査

北海道森町農林課長
宮崎 渉

北海道農業の一端を地熱の力を借りながら担い続ける

北海道南部に位置する森町では、1982年に森地熱発電所が運転開始をしたことから、地域全体での地熱水の有効利用に取り組み、発電後に地下還元井に戻す地熱水の一部を真水と熱交換し、63℃の温水を農業用ハウスに供給しています。熱交換施設の維持費は16軒の農家で構成されている地熱利用ハウス組合が全額負担し、トマトやきゅうりを生産。同組合の野菜出荷額のうち地熱利用の割合はトマトで42%、キュウリは54%を占めるに至っています。近年は施設の老朽化などが課題となっていますが、新たな売上の確保も目指し、北海道農業の一端を担い続けていきたいと考えています。

参加自治体プレゼンテーション-2

写真/地熱貯留層の地表調査

秋田県湯沢市長
齊藤 光喜

市民・行政・事業者の信頼関係の上に築かれた地熱の街づくり

雄大な自然と豊富な温泉群に恵まれた湯沢市では、「ゆざわジオパーク」を形成し、官民と地域が一体となった地熱の情報発信を行っています。本年5月から「山葵沢(わさびざわ)地熱発電所」の建設が新たに開始されましたが、ジオパーク活動との連携を図りながら情報発信することで、観光客の増加も期待できると考えています。また、湯沢市では地熱資源を農業に活用しています。1979年に地熱を利用した食品乾燥機を農産加工施設に導入し、さまざまな野菜が乾燥加工され、物産品として人気を集めています。また地熱を利用した農業用ハウスでは、大手コンビニエンスストアと協定を締結し、トマト栽培の実証事業を共同で開始いたしました。これまでの経験から地熱資源の開発は、市民の皆さま、行政、事業者の信頼関係の上に築かれるものだと実感しています。

写真/地熱貯留層の地表調査

宮城県大崎市長
伊藤 康志

温泉の利用を学び、遊べる「温泉エネツーリズム」を目指して

大崎市の鬼首(おにこうべ)地熱発電所がある鳴子温泉地域は、370本の源泉を有し、全国にある11種類の泉質のうち、9種類を有する国内屈指の温泉地です。鳴子では古くから温泉を道路融雪や給湯・暖房など浴用以外に利用してきましたが、その温泉熱導入の効果について調べたところ、鳴子温泉地域の40の宿泊施設のうち、23施設で温泉熱を利用し、これに排湯や共同湯の利用を加えた化石燃料の削減効果は、灯油換算で200ℓドラム缶9,897本分に達したほか、灯油と買電の代替金額が約1.26 億円/年、二酸化炭素の削減量が4,936t-CO2/年となっていたことがわかりました。 さらに現在、鳴子温泉地域では、「温泉エネツーリズム」をテーマに、温泉に入るだけでなく、温泉の利用を学び、遊べるところを目指してさまざまな試みが行われています。今後も大崎市では観光客の増加、産業振興、雇用拡大などを目指した地熱資源の有効活用について、官民一体となり検討を行っていきます。

写真/地熱貯留層の地表調査

福島県柳津町長
井関 庄一

地熱発電の存在が地域の伝統復活に貢献

柳津町の柳津西山地熱発電所は、日本の地熱発電所のなかでは単一ユニットで最大の出力となる65,000kWを誇ります。また「永続地帯2014年度版報告書」によると、柳津町は全国の市町村別の再生エネルギー自給率で5位に位置づけられています。この地熱資源を活用した町おこしを構想し、これまでPR館の設置やひと味違う温泉体験として川の浅瀬に自分で温泉を掘る「マイ温泉」などを開いています。これらはいずれも地熱の恩恵によるもので、こうした体験や滞在への取り組みを、町としても強化しています。 また、地熱発電所の存在が予想していない効果を生み出しています。それは若い世代が、地域の伝統を復活させようとする動きが出てきたことです。消失していたお祭りも彼らの働きによって復活させることができました。復活を成し遂げた人々のなかには地熱発電所で働く地元の若い人たちもおり、この動きに地熱発電所も一役買っていると考えています。

写真/地熱貯留層の地表調査

大分県九重町長
坂本 和昭

温泉にとどまらない地熱資源の活用で名物料理が誕生

九重町は八丁原(はっちょうばる)発電所、滝上発電所、大岳発電所、菅原バイナリー発電所の4つの地熱発電所を有する地熱の街です。このうち本年6月に運転開始した菅原バイナリー発電所は、町が民間企業と協働して地熱発電事業を行う国内初の事例です。これらの地熱の資源を活かし、地熱発電所から、一般家庭や宿泊施設に分湯を行っているほか、八丁原発電所については九州電力と九重町で第三セクターをつくり、温泉供給を行っています。しかし、今は温泉だけでは観光にいらしていただけません。温泉にプラスが必要で、特に食べるものが重要です。そこで発電所から蒸気を供給してもらい「蒸場」をつくり、名物料理「極楽温鶏地獄蒸し」を提供しています。非常に美味しく、脂も落ちているのでヘルシーだと、観光客の皆さまから大変好評をいただいています。さらに来年度には新たなバイナリー発電所が稼働を開始する予定となっており、地熱資源を生かした町づくりをさらに推進していきたいと考えています。

写真/地熱貯留層の地表調査

鹿児島県指宿市 市長
佐藤 寛

トラブルを踏まえて、新たなビジネスモデルを創造

指宿市では、2012年に導入された固定価格買取制度により地熱発電事業者の参入が相次ぎ、地元の市民とのトラブルが発生しました。これを受け、乱開発の防止、温泉事業者との対立などを考え、昨年末に温泉を市と市民の共有資源という前提のもと、温泉資源の保護と持続可能な活用と産業の振興を目的に協議会を設立しました。 協議会の活動の一環である「地熱の恵みプロジェクト」では、温泉資源を電気事業者に貸与し、得られた地熱水などを観光や六次産業などへの有効利用を進めることを計画しています。プロジェクトのスタートとして、本年5月に温泉資源を貸与する電気事業者を公募により採択し、2カ所の市有地で地熱発電所の建設を推進することが決定しました。これらの発電後の熱水は温泉施設や老人福祉センターで利用できるようにする予定です。

若い世代の視点から-「市民討論会」「次世代による地熱利用研究発表」

日本における地熱の本格的な活用は、今後の加速が期待されています。エネルギー資源としての活用はもちろんですが、地熱開発が進むことで、地熱地域に住む人々の生活が将来的に豊かになっていくことも期待できます。「全国地熱自治体サミット in 湯沢」では、地熱が地域にもたらす付加価値について次世代を担う若者の視点から発言する場として地元高校生による「次世代による地熱利用研究発表」や「市民討論会の報告会」を行いました。

「次世代による地熱利用研究発表」 (秋田県立湯沢翔北高校商業クラブ)

ゲストと湯沢市長のトークセッションが地熱、温泉、地域の話題で盛り上がった後、授業で学んだ商業の知識や技術を活かし、高校生ならではの視点で『地熱のブランド化』プロジェクトに取り組んでいる、秋田県立湯沢翔北高校の商業クラブが、これまで活動成果についてプレゼンテーション。特に、2013年度から挑んだ「農商工連携」のビジネスモデルの研究から生まれた地熱で乾燥させたサクランボ"ミッチェリー"の生産と販売に力を入れていると説明しました。最後は「湯沢市全体が地熱で活性化するよう、地域の良さを伝え、地域を創り、地域を結ぶ活動を継続していきます」と力強く語りました。

湯沢翔北高校による地熱利用研究発表の様子

湯沢翔北高校による地熱利用研究発表の様子

ゲストがスペシャルアシスタントとして参加した「市民討論会」

「市民討論会」は、サミットが開催された日の午前中からスタート。地元秋田県の秋田大学や国際教養大学の学生さん、秋田県立湯沢翔北高校の皆さん、湯沢市の青年会議所や商工会議所青年部また事業者の皆さんらが参加しました。さらに、スペシャルアシスタントとして、山崎亮さんらも参加。3チームに分かれ、それぞれのテーマに対して、地熱を活用してどのような取り組みが可能かをディスカッションし、その検討結果をステージで発表しました。

湯沢翔北高校による地熱利用研究発表の様子

市民討論会の様子

Aチーム:若手が活躍できる街づくり
「地熱を地域熱」に変えていくというコンセプトを発表。若手の活躍の拠点にするためのエコハウス作りや、若手教育としての留学体験、雇用創出のための、地熱を利用したハウス栽培やウナギの養殖などが提案されました。
Bチーム:売れるモノづくり
「地熱を地域熱」に変えていくというコンセプトを発表。若手の活躍の拠点にするためのエコハウス作りや、若手教育としての留学体験、雇用創出のための、地熱を利用したハウス栽培やウナギの養殖などが提案されました。
Cチーム:観光など人が集まる街づくり
インフォグラフィックスを活用し、湯沢市の過去、現在、そして未来への推移を可視化するプロジェクト「Visionalist」を発表。湯沢市の現状を把握することで得た情報を、山葵沢発電所に隣接したエッジのたったPR館で提供することを提案しました。

湯沢翔北高校による地熱利用研究発表の様子

市民討論会 中間発表の様子

展示会

ホテル内に設けた展示会場では、主催者のJOGMEC、湯沢市のほか、参加した各地方自治体、湯沢湘北高校、湯沢地熱株式会社、日本地熱協会が、地熱利用産品の試食展示や地熱発電、地熱利用への取り組みなど実物、模型、写真等の出品を行いました。サミットの休憩時間などは大いに賑わい、特に一般の参加者を中心に地熱の理解活動を進めることができました。

来場者で賑わう会場

来場者で賑わう会場

まとめ

熱い議論を交わした「沸騰!地熱塾 ー 全国地熱自治体サミット in 湯沢」。会場の客席では熱心に話に聞き入りうなずく人、若い人たちの真剣な発表に大きな拍手を送る人など、まさにステージと客席が一体となって地熱について学び考えた1日でした。
来場者に協力いただいて実施したアンケートによると、地熱に関する理解向上度、イベントへの参加満足度は、ともに9割を超え、さらに自由記入された意見・感想でも、寄せられた208件のうち肯定的な内容が197件(95%)を数え実施成果として十分な評価を得たと考えています。
今後、実施内容を小冊子として取りまとめ、地熱開発に取り組む地方自治体など関係先に配布するなど、今回の成果を引き続き広く発信してまいります。