これまでの歴史

世界中で人々の生活を永く支えてきた、地熱。 有名な古代 ローマ帝国のカラカラ大浴場をはじめ、日本では四国の道後温泉が、最初の温泉として 『日本書紀』に記述されています。地熱による「発電」が始まった20世紀初頭から現在までの歴史を見ていきましょう。

JAPAN 日本

地熱発電のはじまり

地熱利用第一発電所内におけるタービン、ストレーナーおよび排気管 (1925年(大正14年)12月28日撮影)

日本の地熱発電の歴史は、1919年に海軍中将・山内万寿治氏が、大分県別府市で噴気孔掘削に初めて成功したことに始まります。その後、事業を引き継いだ東京電燈(株)研究所長・太刀川平治氏が、1925年に日本最初の地熱発電(出力1.12kW)に成功しました。それから、第二次世界大戦が終わるまで大きな発展は見られませんでした。

1919年

海軍中将・山内万寿治氏が大分県での掘削に成功

1925年

太刀川平治氏が日本最初の地熱発電に成功

日本初の地熱発電所

当時の松川地熱発電所

終戦後、電力の安定供給という大きな課題を抱えた日本は、水力や大型火力の建設を進めるとともに、地熱の実用化に向けた調査・研究開発にも力を注ぎました。その努力が1966年、ついに実を結びます。日本で最初の本格的地熱発電所として、蒸気卓越型の松川地熱発電所(岩手県)が運転を開始したのです。さらに翌年、熱水卓越型の大岳発電所(大分県)も操業。この2つの発電所の成功によって地熱開発は大きく進展していくことになります。

1966年 日本初となる松川地熱発電所が運転を開始
1967年 大岳発電所が運転を開始
1973年

第一次石油ショック
自然公園法、 自然環境保全法の一部改正

地熱隆盛時代

許可出力と発電電力量の年次変化 出典:一般社団法人火力原子力発電技術協会(地熱発電の現状と動向2018)より作成

1970年代、二度にわたる石油ショックを契機とした石油代替エネルギー政策(サンシャイン計画)に後押しされ、地熱資源開発は急速に拡大しました。東北・九州地域を中心に発電所の建設が相次ぎ、1996年には地熱設備の認可出力50万kWを達成。
しかし、それ以降、石油価格の安定化と日本のエネルギー政策の転換などにより、地熱発電は横ばいの時代を迎えます。

1974年 サンシャイン計画がスタート
1976年 資源エネルギー庁が地熱開発基礎調査を開始
1978年 第二次石油ショック
日本地熱学会設立
1980年

財団法人新エネルギー財団設立
NEDO設立、地熱開発促進調査を開始

1985年

地熱発電開発費補助金制度創設

1996年 地熱発電設備容量50万kWを達成
2000年 電気事業法改正による電力自由化
2003年 電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)施行
2005年 京都議定書発効
2006年 日本初の地熱バイナリー発電所(八丁原)
2012年 固定価格買取制度(FIT)開始

再び地熱隆盛へ

写真提供:湯沢地熱株式会社(2019.5月撮影)

東日本大震災による深刻なエネルギー危機をきっかけに、固定価格買取制度(FIT)が開始されるなど、再生可能エネルギー導入拡大の機運が高まりました。地熱資源開発を促進するための規制緩和も進んでいます。地熱発電への期待が高まる中、大規模な地熱発電所としては23年ぶりとなる松尾八幡平地地熱発電所(岩手県)が2019年1月に、山葵沢地熱発電所(秋田県)が2019年5月に運転開始しました。

2015年 国内で23年ぶりに大規模地熱開発が秋田県湯沢市で開始
2016年 10月8日を『地熱発電の日』に制定
2019年 1月に松尾八幡平地熱発電所(岩手県)が、5月に山葵沢地熱発電所(秋田県)が運転を開始

WORLD 世界

1900年代 イタリア

世界初の地熱発電所が誕生

1904年、イタリアのラルデレロ地方で世界初となる地熱発電実験が成功しました。それを受け1913年に世界初の蒸気卓越型地熱発電所が操業(250kW)。
その後、第二次世界大戦で被災しましたが再建され、現在も電力や熱供給で地域社会に大きく貢献しています。

1950年代 ニュージーランド

“熱水卓越型”の地熱発電が開始

第二次世界大戦中にイタリア・ラルデレロに駐留していたニュージーランド兵が、地熱発電の経験を持ち帰り、1958年にニュージーランドのワイラケイで世界初の熱水卓越型地熱発電所を操業。気水分離器の開発に成功したことで、世界中に地熱発電所ができる端緒となりました。
日本では1967年に大岳発電所(大分県)がこの技術を初めて取り入れました。

1970年代 アイスランド

世界有数の地熱大国に成長

石油ショックを契機に、政府主導で再生可能エネルギーへの転換を強力に推進。1977年のスヴァルスエインギ地熱発電所を皮切りに、計7カ所の地熱発電所を建設しました。
現在、国内の電源のほぼ100%は再生可能エネルギーで、そのうち地熱発電が約30%を賄うという、世界有数の地熱大国に成長しています。

1990年代 アメリカ

貯留層の“再生技術”が確立

1960年、世界最大の地熱地帯にガイザーズ地熱発電所を建設して以来、順調に地熱発電を行っていた同国。ガイザーズ地熱発電所では1980年代半ばから蒸気の減衰による発電量の低下が生じました。これを解決するため、1997年、生活排水の処理水を地熱貯留層に注入する「リチャージ」を実施。以降、発電能力は回復しました。

2010年代 インドネシア・トルコ・ケニア

地熱発電設備能力の著しい増強

近年、インドネシア、トルコおよびケニアにおいて地熱発電が著しく伸びています。これらの国々では、自国の豊富な地熱資源を背景に、経済成長に伴う電力需要の増加に対し、地球温暖化防止にも配慮した地熱発電を国の政策として急速に拡大させています。今後もこの傾向は続き、世界の地熱発電大国の数はますます増えていくことになります。

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