森地熱発電所
北海道電力(株)のパンフレットをもとに作成しております。
森地熱発電所は、わが国で8番目の地熱発電所として昭和57年11月に運転を開始しました。特徴としては、カルデラ盆地に設置し世界的にも類をみないものであると同時に、国立公園外に最初に設置し、民家に隣接している大変珍しい地熱発電所です。

名称 | 森(もり)地熱発電所 |
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所在地 | 北海道茅部郡森町字濁川3-91 |
認可出力 | 25,000kW |
蒸気部門 発電部門 |
北海道電力株式会社 |
運転開始 | 昭和57年11月26日 |
発電方式 | ダブルフラッシュ |
地熱エネルギーとは
日本は世界でも屈指の火山国。国内いたるところで温泉が湧き出ています。温泉は、地下水が「地熱」と呼ばれる地中の熱によって温められたもので、地球の内部にある1,000度前後のマグマを源としています。このマグマから発生する熱が、地下水を加熱し、高い圧力を持った熱水や蒸気をつくるのが「地熱エネルギー」です。
この地熱エネルギーで作られた高温の蒸気と熱水を地上に取り出して、蒸気と熱水に分離し、この蒸気のエネルギーでタービンをまわして発電するのが地熱発電です。いわば地球が原子力発電所の原子炉(火力発電所のボイラー)の役目をはたしています。
環境をまもるために
使用面積をできるだけ少なくし、建物の色合いについて留意するなど、自然と環境との調和に十分配慮しています。
熱水と冷却水は全て地下に戻し、一般排水は浄化槽で処理した後に排水しています。
冷却塔頂部から排出される蒸気中のガスは、大量の空気とともに上昇希釈させています。
静かな自然環境を守るため、機器類の屋内設置や低騒音型の機器を採用しています。
環境モニタリングを実施して、環境の保全に万全を期しています。
発電所の位置

開発の経緯
北海道濁川地域の地熱調査は、昭和42,43年に工業技術院地質調査所により実施されましたが、本格的な地熱開発調査は昭和47年から日本重化学工業(株)によって行われました。この間、昭和48,49年には工業技術院の基礎調査および資源エネルギー庁による深度500mの試錐調査が行われています。また、昭和50年から52年にかけては、日本重化学工業(株)が調査井9本(深度400-1,500m)を掘削しましたが、これら各種の調査結果から当地域の地熱開発の可能性が極めて高いことが確認されました。
昭和52年以来、日本重化学工業(株)により事業を継承した道南地熱エネルギー(株)は、北海道電力(株)と共同で地熱開発に着手し、昭和57年11月に森地熱発電所は運転を開始しました。なお、平成16年2月に北海道電力(株)は、道南地熱エネルギーから蒸気生産設備を購入し、蒸気部門・発電部門の一体運用を行っています。
昭和47年7月 | 調査開始 |
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昭和52年8月 | 井戸掘削開始 |
昭和56年4月 | 発電所建設開始 |
昭和57年11月 | 営業運転開始。 |
基地の配置

設備の概要
森地熱発電所では、蒸気井から噴出した流体を各生産基地に設置した気水分離器で蒸気と熱水に分離し、蒸気は発電所へ、熱水は減圧器に導きます。
生産井
地下深部の地熱貯留層から熱水と蒸気を取り出すための井戸です。

一次・二次蒸気パイプ
一次蒸気(高圧)と二次蒸気(低圧)の蒸気を生産基地から発電所へ送る管です。

気水分離器(セパレーター)
生産井から噴出した蒸気や熱水は気水分離器に導かれ、蒸気と熱水とに分離される。分離された蒸気(高圧の蒸気)はタービンへ、熱水は減圧器へ導かれる。

ダブルフラッシュ方式
分離後の熱水から、さらに減圧器で二次(低圧)蒸気を発生させます。このようにして取り出された一次蒸気と二次蒸気でタービン・発電機を駆動して発電します(ダブルフラッシュ方式)。

減圧器
減圧器ではタンク内で熱水を噴射して熱水の一部を蒸気化し、蒸気(低圧の蒸気)と熱水に分離する。この熱水は還元井により地中深くにもどされる。

タービン・発電機
分離された高圧と低圧の蒸気はタービンへ導かれ、タービンを回転させ発電機を回し、電気を発生させます。

冷却塔
タービンで使用された蒸気は復水器内に入り、冷却水で冷却され蒸気は凝縮して温水となります。
冷却塔では温水を外気で冷却し、冷却水を作る。その冷却水は復水器へ送られて蒸気を冷却するために再び使用されます。

地熱の構造

濁川盆地の地熱エネルギー
濁川盆地は、今から1万数千年前に噴火によりできた倒立円錐型のくぼ地に、火山性堆積物の一部や周辺土砂が地すべり等により堆積して、カルデラ地形が形成されたものと考えられています。地熱エネルギーでつくられた高温の蒸気と熱水は上磯層群中の大きな断層およびカルデラ破砕帯より取り出し、蒸気より分離した熱水は、地下の貯留層へ影響を与えないよう深部還元しています。