八丁原発電所
九州電力(株)のパンフレットをもとに作成しております。
八丁原(はっちょうばる)発電所は、わが国最大の地熱発電所(1・2号機合計出力110,000kW)で、昭和52年6月に1号機、平成2年6月には2号機が完成しました。九州では、大岳発電所(出力12,500kW、昭和42年8月完成)についで2番目。全国では5番目に完成しました。

名称 | 八丁原(はっちょうばる)発電所 |
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所在地 | 八丁原(はっちょうばる)発電所 |
認可出力 | 1号機:55,000kW、2号機:55,000kW |
蒸気部門 発電部門 |
九州電力株式会社 |
運転開始 | 1号機:昭和52年6月24日、2号機:平成2年6月22日 |
発電方式 | 1号機:ダブルフラッシュ、2号機:ダブルフラッシュ |
地熱発電とは
火力発電は石油などを燃やして蒸気を作りますが、地熱発電は、化石燃料は全く使わず、地下から取り出した蒸気を利用するクリーンな発電です。火力発電のボイラーの役割を地球が果たしているのです。地下の岩盤の中に閉じ込められマグマの熱で高い温度になっている地下水を蒸気井(じょうきせい)で取り出して発電に使います。蒸気を取り出した残りの熱水は、再び地下へ戻します。このように、地熱発電は、地熱という自然の力を利用した発電方法で、国内の資源を有効に活用しているのです。
自然そのままの環境のなかで自然の力を利用したエネルギーを
阿蘇くじゅう国立公園と耶馬日田英彦山国定公園の美しい山なみに囲まれた高原にある八丁原発電所。約195万平方メートルという広大な構内ではミヤマキリシマやシャクナゲが群生し、イノシシやタヌキの姿も見ることができます。また、カッコウやセキレイも木々のあちこちに。この美しく豊かな自然環境に溶け込むため、建物はすべてグレー系の色で統一。春の花、夏の花、秋の紅葉、冬の樹氷と四季折々の景観が訪れる人の目を楽しませる八丁原。この恵まれた環境のなかで自然の恵みを利用した地熱発電が行われています。
発電所の位置
八丁原発電所のある九重町
九重町は、大分県の中央部にあり、東と南を阿蘇くじゅう国立公園の九重連山、西側を耶馬日田英彦山国定公園の山々に囲まれた高原と温泉の町です。
なかでも筋湯(すじゆ)温泉は最大の規模を誇っています。紅葉の名所として定評のある九酔渓(きゅうすいけい)をはじめ竜門の滝、瀬の本高原や牧の戸峠などの観光地も点在しており、四季折々の風景が楽しめます。

開発の経緯
昭和39-41年 | 大岳から八丁原間で調査井2本を掘削。 |
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昭和43年 | 蒸気井掘削開始。 |
昭和48年7月 | 八丁原1号機電調審通過。 |
昭和50年7月 | 八丁原1号機着工。 |
昭和52年6月 | 八丁原1号機営業運転開始。 |
昭和55年7月 | 八丁原2号機調査申入れ。 |
昭和56年12月 | 八丁原2号機調査井掘削開始。 |
昭和61年12月 | 八丁原2号機電調審通過。 |
昭和62年12月 | 八丁原2号機着工。 |
平成2年6月 | 八丁原2号機営業運転開始。 |
特徴
発電能力
1・2号機があり、それぞれの出力が5万5千キロワットで、合計11万キロワットの電気を発電することができます。 1軒の家庭で平均3キロワットの電気を使うとすれば、約3万7千軒分の電気をまかなうことができます。年間の発生電力量は約8億7千万キロワット時で、ほぼ20万キロリットルの石油が節約できます。
発電所の標高
阿蘇くじゅう国立公園特別地域の一画にあり、九重連山のふところにいだかれ自然にめぐまれた標高約1,100メートルの地にあります。このために、周辺の環境と調和した植樹などによって、よりよい環境づくりをめざしています。
蒸気井の深さ
31本の蒸気井があり、それぞれの深さが違いますが、浅いもので760メートル、最も深いもので3,000メートルあります。
蒸気の使用量
各々の蒸気井からでる蒸気は、地下の状態、深度、井戸の大きさで変わりますが、発電所全体としては毎時890トンです。
基地の配置

設備の概要
八丁原発電所では、二相流体輸送方式を用い蒸気井から噴出した蒸気と熱水を混合状態のまま発電設備の近くに設置した気水分離器に導きます。
蒸気井
地下深部の地熱貯留層から熱水と蒸気を取り出すための井戸です。この蒸気でタービンを回し発電します。

二相流輸送管
蒸気と熱水が混じっている流体(二相流体)を蒸気井から発電所へ送る管です。

気水分離器(セパレーター)
蒸気井から二相流体輸送管を通ってきた蒸気と熱水混じりの流体を蒸気と熱水に分離する装置です。分離された蒸気はタービンへ、残りの熱水は、還元井により再び地下へ戻します。

ダブルフラッシュ方式
導かれた混合流体は気水分離器で1次(高圧)蒸気と熱水に分離され、熱水はさらにフラッシャーで減圧膨張され2次(低圧)蒸気を発生させます。このようにして取り出された1次蒸気と2次蒸気でタービン・発電機を駆動して発電する方法をダブルフラッシュ方式と呼びます。

タービン・発電機
タービンは、発電機を回すための羽根車で、蒸気の力で回る風車のようなものです。1分間に3,600回転で発電機を回し、電気を作ります。

冷却塔
復水器でできた温水(発電に利用した蒸気の凝縮水)を冷却させる装置です。ここで冷却された水(冷却水)は復水器に送られて蒸気を冷却するために再び使用されます。

フラッシャー
気水分離器で分離した熱水をフラッシャーに導き、圧力を下げることでもう一度蒸発させ、その蒸気も発電に使います。このように、熱の有効利用をはかるシステムをダブルフラッシュシステムと呼んでいます。
八丁原発電所ではこのシステムを採用し、出力を約20%も増加させています。昭和55年度の機械振興協会賞を受賞しました。

八丁原発電所は、発電所の運転状況がひと目で分かるメーターや、運転の調整をするスイッチ類を約2km離れた大岳発電所に集め、3交代24時間体制で運転監視を行っています。そのため、八丁原発電所に運転員はいません。

地熱の構造
八丁原地域の地熱構造
地熱エネルギーの熱源はプレートの移動による摩擦熱などで生じたマグマ溜りです。八丁原地域ではこのマグマ溜りによる火山活動が約20万年前に起きたといわれており、その熱源で現在の地熱貯留層が形成されています。
地中深くに浸透した天水が、このマグマ溜りからの熱で230度から280度に加熱され、熱水貯留層をつくります。この貯留層ができる条件として、浅部に粘土質(酸性変質帯)の帽岩(キャップロック)が必要で、これも長年の地熱活動で生じたものです。帽岩は、水の通りにくい不透水性の地層で、地熱貯留層の蓋の役目を果たしています。地下深部から上昇した高温の熱水や蒸気は帽岩にさえぎられて地熱貯留層を形成し、帽岩はこの地熱貯留層の熱水や蒸気が地表近くの低温の地下水や温泉等と混ざり合うことを防いでいます。

トピック
バイナリー発電実証試験
九州電力では、八丁原発電所構内に八丁原バイナリー発電施設を設置し、平成15年度に運転を開始しました。バイナリー発電方式とは、沸点の低い媒体を熱交換器で加熱・蒸発させ、その媒体蒸気により発電させる方式のため、従来の地熱発電方式では利用できなかった低温度域の蒸気・熱水での発電が可能となります。今回、熱源としては噴出勢力(温度・圧力)が減衰した蒸気井を有効利用しています。
低沸点媒体としてペンタンを利用した地熱バイナリー発電設備は、海外に多くの実績がありますが、国内における実績はありません。そのため、経済性及び機器の性能等の評価を目的として、実証試験を運転開始後から約2年間実施し、平成18年4月に営業運転を開始しました。

PR施設の紹介
八丁原発電所展示館
発電所本館に隣接して八丁原発電所展示館があります。地熱発電のしくみや種類をパネルや映像を豊富に用いて分かりやすく説明しています。

