調査手法と調査目的
地熱開発では、マグマ溜りなどから供給される熱(熱構造)、蒸気や熱水を供給する断裂系(流路)、蒸気や熱水を地下に封じ込める器(貯留構造)の3つの要素が揃ってはじめて大規模な開発ができると言われています。
このため、まず広域的な空中物理探査を実施します。空中物理探査では、空中重力偏差法探査で断層の分布や基盤の深さを調べて流路となり得る構造を把握し、時間領域空中電磁探査と空中磁気探査で変質帯(帽岩)の分布を調べて器(貯留構造)の存在を推定します。
地表調査では、空中物理探査より狭い範囲について、地質調査・地化学探査を実施し詳細な地質構造及び温度情報を推定するとともに、深部の物理探査データを取得し、ボーリング調査で評価すべきターゲットを抽出します。
さらに、ボーリング調査により直接地表下の地質、構造及び温度情報を把握することで地熱資源ポテンシャルの評価を行っています。
調査手法についてはこちらもご参照ください。
広報誌:JOGMEC NEWS vol.71 地熱資源の探し方
JOGMECの空中物理探査の特徴
効率的に広域の調査を実施するため、ヘリコプターを活用した空中物理探査(地熱資源ポテンシャル調査)を実施しています。調査精度の向上を図るため、最新の手法を用いてデータの計測を行うように努めています。
空中重力偏差法探査は、地下の岩石密度の分布を反映する微小な重力の空間変化を捉えることができ、広い範囲の地質構造を詳細に把握することのできる手法です。地熱発電に使用する高温の蒸気や熱水は地下の岩盤の割れ目に存在することから、こうした割れ目を重力構造から推定することで、有望な地熱貯留層の発見を目指します。
時間領域空中電磁探査は、地下の岩石の電気抵抗の分布を調べることのできる手法の一つです。
高温の蒸気や熱水の影響を受けた地下構造や地表の粘土化変質帯等などは電気抵抗が低く(電気を通しやすい)、こうした特徴を示すエリアには、地熱貯留層の存在が期待できます。地表に近い部分の電気抵抗が低いと、いくぶん探査深度が浅く(100〜200m程度)なりますが、条件が整えば500m程度までの電気抵抗の構造の探査が可能となります。
空中磁気探査は、地磁気の分布を調べることができる手法です。
鉄鉱物が熱水によって影響を受けると磁気的な性質が変化します(変質)。こうした熱活動に伴う岩石の性質の分布を反映する地磁気強度の分布は、地下に広がる地熱資源の分布域の推定の一助となります。また、地中の岩石は磁気を帯びていますが、高温のマグマに接触してキュリー点(例えば磁鉄鉱のキュリー点は約580度)を超えると、磁気的性質を失う現象が生じます。この現象が生じる深度を解析的に求めることで、マグマ溜りの深度分布を推測することができます。

手法 | 特徴 | 期待できる効果 |
---|---|---|
空中重力偏差法探査 | 地下の岩石密度分布を測定できる。 |
|
時間領域空中 電磁探査 |
地下500m程度まで岩石の電気抵抗の分布を測定できる。 |
|
空中磁気探査 | 岩石の磁気的な性質を測定できる。 |
|

以上の特徴の空中物理探査を行うことにより、国土情報としてのより正確なデータを取得して広域の地質構造を把握し、新たな視点による地熱有望地域の絞り込みやポテンシャル評価に活用することが期待されています。
